聖地

サラリーマン男 「話って何?」


OL女 「私、インドに行く事にした」


男 「インド?何泊?」


女 「・・2年・・・ごめん。」


というANAのCMを TVでちょくちょく観る



バックパッカーの聖地 インド


そう 価値観を変えたいのなら
自分を見つめ直したいのなら やはりインド


ハワイやグアムやプーケットでは
どう頑張っても 価値観なんて変わらないだろう




しかし しかしだ


価値観って何?
自分を見つめ直すって何?





25歳の時 生誕25周年を記念して
なにか とんでもない物を観たい という欲望から
10日間ほどのインド一人旅を決行した


1日中火であぶられているような雨季前の5月のインド



下痢は毎日止まらない
タクシーに乗れば目的地になど絶対に着かず
お釣りは常にちょろまかされる
乞食には足をつかまれ
自称ガイドの大男達にはカツアゲまでされた



何が聖地じゃボケ 


と呟きながら歩いたガンジス川のほとり
そこで僕はまさに とんでもない物を観てしまったのだ



それは 
髪の毛は腰のあたりまで伸び放題 ぼろぼろの服をまとい
一本の流木を杖代わりに ヨタヨタと素足で歩く
1人の白人青年


明らかに薬物によってイカれてしまっているその男の姿は
地元の筋金入りのサドゥー達でさえ
え?と 振り返ってみてしまうほど 


ある意味 完璧な姿であった



おそらくもう パスポートも無くなってしまったのであろう
国へ帰るエアチケットはおろか もう帰る気力すらなく
たぶん彼は この地で一生を終えて行くんだろうな〜と思うと
ちょっと悲しい気持ちになった


彼もまた 自分を見つめ直しに
聖地にやって来た一人なのであろうか


だとすれば彼は 途中で完全に自分を見失ってしまったのか
あるいは逆に 究極の自分を見つけてしまったのか


ともかく 価値観を変えるなどという行為には
相当の覚悟を持って臨まなくてはいけないんだなと
その時感じた記憶がある


もう15年ほど前の話だ


あの ちょっとジョニーサンダースに似た白人青年は
あれから どうなったんだろか・・・